大会長挨拶
日本ロールシャッハ学会第29回大会を、2025年10月11日(土)・12日(日)の両日に亙り、関西福祉科学大学(大阪府柏原市)にて開催することとなりました。
今大会のテーマは「ロールシャッハ法の射程と深淵」と致しました。ロールシャッハテストは、スイスの精神科医ヘルマン・ロールシャッハによって発表された1921年以来、代表的な投映法心理検査として世界中で使用されてきています。近年ではそれに対する「非科学的」などという批判が一部にはあるものの、歴史の中に埋没することなく100年以上もの永きに亙って数多の臨床家を魅了しつづけてきたロールシャッハテストは、やはりそれ相応の卓越した検査法であることは疑いを容れません。また、国際ロールシャッハ及び投映法学会(ISR)の公用語に日本語が含まれていることが如実に物語るように、わが国は世界のロールシャッハ法の研究・実践を牽引する一大中心地でもあります。ロールシャッハ法の今後のさらなる活用・発展に向け、今大会ではその射程(活用領域の拡大など)や深淵(より精緻な解釈理論の構築など)について今一度現状を俯瞰しつつ、将来に向けて展望を拓く機会をご提供したいと考えております。
1日目午前のワークショップは、ロールシャッハ法に関しては精神分析・発達障害・事例検討、またロールシャッハ法以外の投映法検査に関しては描画法・TATの、計5コースを用意いたしました。1日目午後の一般演題は、口頭発表のセッションを3枠設け、より多くの一般演題のセッションにご参加いただけるようにしました。また、そのうちの1枠を用いて、「ロールシャッハの集い」(関西ロールシャッハ研究会)と本学会広報・情報化委員会との共催で、ロールシャッハの学びを支える場について語り合う企画を実施致します。
2日目午前の大会長講演では、ロールシャッハ法の深淵に焦点を当て、ロールシャッハテストに表れる被検者の「自己」の様相を通じて、その精神病理の理解や精神・心理療法的接近について考察してみたいと思います。2日目の昼休みには、本学会広報・情報化委員会の特別企画としてフリートークルームを設けます。2日目午後の特別講演では、わが国を代表する精神病理学領域の碩学のお一人である内海健先生(東京藝術大学名誉教授)をお招きし、「精神病理学からみた心の深さ」という題目にてお話を賜ります。そしてシンポジウムでは、ロールシャッハ法の射程に焦点を当て、神経心理学、小児、矯正の専門の先生方にご登壇いただき、ロールシャッハテストのもつ幅広い可能性について共に考えたいと思います。今大会が、参加者各位の今後の研究・臨床活動に向けた有益な示唆をご提供できるならば、それに優る喜びはありません。
会場のある大阪府柏原市は、奈良盆地からの大和川の流れが生駒・金剛の両山地の間を抜けて大阪平野に姿を現す場所にあり、かつては河内国の国分寺が置かれるなど、古くから大阪と奈良を結ぶ交通の要衝として栄え、現在では大都市近郊ながら豊かな自然環境に恵まれた、全国有数のぶどうの産地でもあります。久しぶりの開催となる懇親会では、地元産のワインなどを片手に、ご歓談に花を咲かせていただければと思います。なお、会期の翌日(10月13日)は大阪・関西万博の最終日に当たり、会期を含む連休中は大阪市内を中心に観光客の大幅な増加が予想されますので、宿泊施設をご利用の方は早めにご予約いただくことをお勧め致します。
多くの皆様のご参加を賜りますよう、大会実行委員一同、心よりお待ち申し上げております。
日本ロールシャッハ学会第29回大会長 小笠原 將之